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インスリンシグナル伝達の変化により、女王アリは長生きし生殖的に繁栄できる

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

女王アリは、コロニーの唯一の再生産者であるにもかかわらず、インスリンシグナル伝達の変化によって特徴的な長寿を得ていることが報告された。ほとんどの生物では、生殖と寿命の間にトレードオフが存在する。これは主に、多くの子孫をもつ動物が、自身の寿命を犠牲にして重要な栄養および代謝資源を生殖のために提供することが多いためである。インスリンとインスリン様成長因子シグナル伝達経路は、生殖と寿命短縮の反相関の基礎となっていると考えられている。しかし、アリはこのパターンの例外である。どのコロニーでも、生殖活動は1~数匹の女王に限定されている。生殖能力のある女王は、コロニーの生殖能力のない雌働きアリよりも長く何十年間も生きることができ、数百万個の卵を産む。Harpegnathos saltatorなどの一部の種のアリでは、女王アリが死んだり排除されたりしたときに、働きアリがカーストを変えて生殖能をもつ偽女王アリ、すなわちガマゲイトになることがある。働きアリとして生まれたにもかかわらず、ガマゲイトは働きアリよりも5倍長く生きることができる。また、確立された働きアリカーストのあるコロニーに入れられると、ガマゲイトは働きアリに戻ることができ(リバータント)、寿命は短くなる。これらの動物におけるこの生殖に関連した長寿が、特に活発な生殖期間中にどのように調節されているかは不明である。Hua Yanらは生殖と寿命の関係を評価するため、働きアリ、ガマゲイト、およびリバータントのH. saltatorアリの生殖と代謝に重要な組織のバルクRNA配列決定を行い、カースト切り替え時の遺伝子発現を比較した。予想どおり、Yanらは、ガマゲイトではインスリンがアップレギュレートされて卵形成が促進されることを示したが、他の動物とは異なり、これによって寿命が短くなることはなかった。Yanらは、ガマゲイトではインスリンの増加が卵巣の発達を誘導し、その結果、インスリンシグナル伝達経路のMAPK分枝においてインスリン抑制タンパク質Imp-L2が産生されることを見出した。この抗インスリンタンパク質は、インスリンシグナル伝達経路のもう一つの主要な分岐である、加齢を制御するAKTのシグナル伝達を遮断する。Yanらによれば、AKTの活性の低下により、H.saltatoの女王と偽女王の寿命延長が可能になっている可能性がある。


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