News Release

オニヒトデのコミュニケーションの仕組みを解明し、サンゴ礁保護の手がかりに

オニヒトデの臭いを模倣することで、オニヒトデを効果的に誘導する方法を発見。

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

オニヒトデ合成ペプチドの毒性および行動試験

image: 合成ペプチド混合物を用いた主な実験結果。A)は、ブラインシュリンプ(Artemia salinia)をさまざまな濃度の合成ペプチド混合物(SPM)に暴露した毒性試験を示し、非常に高い生存率を示している。実験終了時の生存率の若干の低下は、自然要因によるものと考えられる。 B)は、2つの独立した流路試験槽(左と右)におけるオニヒトデの位置を示す累積ヒートマップを示している。各水槽には、水流が混ざらない2つの並行水流が高度に制御された条件下で維持されており、水槽内で攪拌(かくはん)や混合は発生しない。一方の水流(キューアーム)には、白い点で示された位置に合成ペプチド混合物(SPM)が一定濃度で添加されている。オニヒトデは水槽内の2つの水流の境界に放流され、実験中にオニヒトデがより長く滞在した領域は暖色で示されている。 C)と D)は、各「アーム」での滞在時間と、オニヒトデが化学的キューの源を特定するために行う探索行動の量をそれぞれ示している。 view more 

Credit: Harris他(2025年)

オニヒトデ( Acanthaster;CoTS: crown-of-thorns starfish)は、インド・太平洋地域のサンゴ礁に生息する在来種であり、生態系の健全性を維持するうえで重要な役割を果たしています。1匹のオニヒトデは、1日に最大240平方センチメートル、年間でおよそ10平方メートルのサンゴ組織を摂取することがあります。しかし、大発生が起きると、数千匹ものオニヒトデが群れを成し、わずか数か月で数ヘクタールものサンゴを食い荒らしてしまいます。こうした過剰な捕食は、硬い骨格を持つサンゴを枯渇させることで、サンゴ礁の健康や安定性を損なうだけでなく、サンゴ礁の長期的な回復力を弱め、気候変動という最大の脅威に適応する力を妨げます。

現在、オニヒトデの対策としては、一匹ずつ手作業で取り除いて駆除する方法が主流ですが、非常に非効率で、労働集約的であり、コストもかかります。そうした中、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)とオーストラリアのサンシャインコースト大学、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームは、オニヒトデがその特徴的なとげを使って、繁殖期以外でもペプチドの「匂い」を嗅ぎ分け、互いにコミュニケーションを取っていることを発見しました。この発見を基に、研究チームは低濃度で毒性のない合成ペプチドを開発しました。この研究成果は科学誌『iScience』に掲載されました。今回の発見は、オニヒトデを特定の場所に誘導し、多くの個体を一度に効率よく駆除することを可能にする、有力な有害生物制御用ペプチド「Acanthaster attractins」の開発につながる可能性があります。 

「ゲノム解析とプロテオーム解析により、オニヒトデのとげは防御のために使われる毒素だけでなく、さまざまなペプチドを感知し分泌するために使用されていることが分かりました」と、OISTマリンゲノミックスユニットを率いる佐藤矩行教授は説明します。「これらのペプチドは、群れの行動を促進する可能性があるため、フェロモンのような働きをすると思われるペプチドを合成したところ、オニヒトデの軌道に常に影響することが分かりました。これらの物質を活用し、オニヒトデの大発生に対する効率的で安全な対策法の開発に貢献したいと考えています。」


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