News Release

隣の島でも遺伝的には孤立―沖縄の固有種の魚が直面する危機

それぞれの個体群を緊急に保護する必要性を強く示唆する研究を発表しました。

Peer-Reviewed Publication

Okinawa Institute of Science and Technology (OIST) Graduate University

ミナミヒメミミズハゼの水中写真

image: 沖縄本島の河川に生息するミナミヒメミミズハゼ。 view more 

Credit: 前田健(OIST)

川と海の間を移動する「両側回遊魚(りょうそくかいゆうぎょ)」は、海流に運ばれることで、比較的離れた生息地に移住する機会をもっています。島の河川は一般的に小規模で、人間活動の影響を受けやすいため、川や島ごとの魚の個体群がどのようにつながっているのかを理解することは、地理的に孤立した種の保全にとって重要です。

このたび、沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究チームが、琉球諸島の四つの島(沖縄本島、久米島、石垣島、西表島)に生息する両側回遊魚「ミナミヒメミミズハゼ(Luciogobius ryukyuensis)」の個体群間における遺伝的なつながりを調査しました。この研究成果は、科学誌『Scientific Reports』に掲載されました。

調査の結果、各島の個体群は遺伝的に明確に区別されることが判明し、島間の仔魚の移動がほとんど行われていないことが示唆されました。同じラグーンを共有し、距離もわずか23キロしか離れていない石垣島と西表島の生息地間でさえ、遺伝的な交流の証拠は認められませんでした。ミトコンドリアゲノムの解析では、まず沖縄本島・久米島と石垣島・西表島の二つのグループが約90万年前に分化し、近隣の2つの島の間ではより最近まで仔魚の交換があった可能性が示唆されました。

この研究結果は、島嶼生態系において両側回遊魚が直面している課題を浮き彫りにしています。特に、久米島、石垣島、西表島といった比較的小規模な島々では、生息環境が非常に脆弱であり、保護の強化が緊急に求められています。例えば、久米島の浦地川では、成魚が確認されたのはわずか10平方メートルの範囲のみで、その周囲は都市構造物に囲まれ、上流域は農地として開発されています。こうした状況下では、現存するすべての生息地を保護・維持することが、この種の遺伝的多様性を守るうえで不可欠です。


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