News Release

自律移動型ロボットの予測できない動きはヒトの不快感を高める

~ロボットへの「慣れ」を生理指標計測から推定~

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

図:ロボットモデル(左).使用機器(中).予測不可能な動作は不快かつ覚醒度高(右)

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<概要>

豊橋技術科学大学情報・知能工学系視覚認知情報学研究室と認知神経工学研究室の研究チームは、VR空間上でヒトと自律移動型ロボットがすれ違う場面において、ロボットの動きがヒトの感情にどのような影響を与えるかを調査しました。その結果、ロボットが単調に直進する場合では、最初は参加者の覚醒度と皮膚コンダクタンス反応が高まり、その後に試行を繰り返すと徐々にそれらが元の度合いに戻る(その状況に慣れる)ことが確認されました。一方で、ロボットが一時停止と再発進をするという、動きが不確実で予測可能性が低い場合、参加者の覚醒度および皮膚コンダクタンス反応が上昇した後、試行を繰り返しても低下せず慣れが生じにくいこと,および参加者が不快に感じやすいことがわかりました。本研究の成果は、ヒトとロボットが共存する環境において、ロボット行動の予測可能性がヒトの快適性に影響を与える要因であることを示唆しています。この研究の結果は、2026年1月19日付でInternational Journal of Social Robotics誌上にオンライン版が発表されました。https://doi.org/10.1007/s12369-025-01341-3

 

<詳細>

近年、配膳、清掃、警備などを目的とした自律移動型ロボットが日常生活で普及し始めています。こうしたロボットが人間社会により広く受け入れられるためには、ヒトとの物理的な衝突回避だけでなく、ヒトが心理的に不快や恐怖を感じない動きが求められます。本研究チームは、ロボット動作の規範にヒトの認知特性や感情を取り入れることで、よりヒトが快適かつヒトに受け入れられやすい共存が可能になると考えております。一方で,これまでの研究では、ヒトとロボットがすれ違う際の軌道や行動パターンに関する調査は行われてきましたが、ヒトが回避行動中に抱く感情については十分に解明されていませんでした

そこで本研究では、VR空間を用いて、ヒトが正面から近づいてくるロボットを避けて目的地まで歩く心理物理実験を行いました。実験では、主観的な感情評価(快・不快、覚醒度の高低)に加え、覚醒度の客観的な指標として手のひらの皮膚コンダクタンス反応(覚醒度と相関のあることが知られている発汗反応)を計測しました。

第一の実験では、ロボットが「正面」「左」「右」のいずれかから直進してくる条件で比較を行いました。その結果、ロボットの接近方向による感情や生理反応の違いは見られず、試行を繰り返すにつれて緊張が低下する慣れ(馴化)の効果が確認されました。これは、ロボットの動きが直進のみで予測しやすかったためと考えられます。

続く第二の実験では、ロボットに不確実性のある動作を追加し、予測可能性を操作しました。具体的には、ロボットは「突然一時停止して再発進する」「全く動かず走行しない」「停止せず直進する」という3つの挙動をとりました。その結果、ロボットが不規則な動き(一時停止)をした場合、走行なしや直進の場合に比べて、参加者の不快感が有意に強まり、覚醒度や皮膚コンダクタンス反応が有意に上昇しました。さらに重要な点として、第一の実験とは対照的に、試行を重ねても馴化が観察されませんでした。これは、不規則な動きが、他条件の規則的な動きの認知にも影響したと考えられます。この結果は、不確実な刺激が不安や嫌悪反応を引き起こすという心理学的な知見と一致しており、ロボットの挙動においては「次にどう動くか予測できること」が、ヒトの安心感にとって重要であることを示しています。

本研究の第一著者である松原優太(情報・知能工学専攻博士前期課程修了・光イメージング情報学国際修士プログラム(IMLEX)修了)は「ロボットが社会に普及しつつある今、ヒトがロボットに対して抱く感情の理解が不可欠です。実社会への実装には様々な課題が残されていますが、本研究から得られた知見がヒトとロボットが互いにストレスなく共存できるデザインの一助となるのではないかと考えています」と説明します。

 

<今後の展望>

本研究では、単純なVR空間と1台のロボットを用いた実験を行いました。今後は、曲がり角や通路幅の変化がある、より現実的な環境や、複数のロボットや歩行者が存在する複雑な状況下での検証を進める予定です。これらの研究を通じて、ヒトの感情に配慮したロボットの動作設計指針を確立し、ヒトとロボットがストレスなく快適に共存できる空間の実現を目指します。

 

図:ロボットモデル(左).使用機器(中).予測不可能な動作は不快かつ覚醒度高(右)

 

<謝辞>

This study was based on the results obtained from the JPNP20004 project subsidized by the New Energy and Industrial Technology Development Organization (NEDO). This work was supported by the Nitto Foundation.

 

<論文情報>

Matsubara, Y. , Tamura, H. †* , Minami, T., & Nakauchi, S. (2026). Subjective Emotions and Physiological Responses During Collision Avoidance with a Virtual Autonomous Mobile Robot. International Journal of Social Robotics, 18(1), 5. https://doi.org/10.1007/s12369-025-01341-3

(*: Corresponding author, †: These authors contributed equally)


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