image: Differences in the surface negative charge between EXOs and PM-EVs manifest as variations in target cell specificity and pharmacokinetics. Therefore, zeta potential measurement can serve as one of the indicators to ensure the critical quality attributes (CQAs) of EVs.
Credit: The University of Tokyo and iCONM
東京大学大学院工学系研究科の瀬尾尚宏 特任准教授と一木隆範 教授は、細胞外小胞(Extracellular Vesicles: EV)の表面電荷と膜脂質組成の関係を体系的に解明し、その機能との関連性を明らかにしました。本成果は、『ACS Nano Medicine』のシステマティックレビューとして掲載されました。
EVは、細胞から分泌されるナノサイズの脂質粒子であり、タンパク質やRNAを運搬することで細胞間コミュニケーションに重要な役割を果たします。中でもエクソソームは、がんや神経変性疾患の診断・治療への応用が期待される一方で、品質や機能を評価するための統一的な基準が未整備であることが課題となっていました。本研究では、EVの重要な物理化学的特性である「表面電荷(ゼータ電位)」に着目し、その違いが膜脂質の構成と分布に起因することを明らかにしました。具体的には、エクソソームが比較的弱い負電荷を示すのに対し、マイクロベシクルなど細胞膜由来のEVはより強い負電荷を持つ傾向があることを示しました。
この違いの鍵となるのが、負に帯電したリン脂質であるホスファチジルセリン(PS)です。エクソソームではPSが主に膜の内側に存在する一方、膜由来のEVでは外側に露出しており、これが表面電荷や細胞との相互作用に大きく影響することが示唆されました。さらに本論文は、表面電荷が単なる物理的性質ではなく、細胞の状態や機能を反映する指標となり得ることを示しています。この知見により、ゼータ電位はEVの分類、分離、品質評価のための有望な指標として位置づけられます。
本成果は、EVを基盤とした治療法の実用化に向けて重要な課題である「品質の標準化」や「再現性の確保」に貢献するものであり、今後の規制科学の基盤構築にもつながると期待されます。また、膜脂質組成や表面電荷を制御することで、体内分布や標的指向性、治療効果を最適化するなど、次世代ナノ医療の合理的設計にも応用可能です。例えば、老化細胞由来の強い負電荷を持つEVは加齢関連疾患との関連が示唆されており、選択的な標的化・除去戦略への展開も期待されます。
本研究は、JST COI-NEXTプログラムの一環として実施されました。同プログラムは、ナノ医療イノベーションセンター(iCONM、川崎市)を拠点に、ナノテクノロジー、医学、工学を融合した学際的研究を推進し、加齢に伴う生命現象の解明と制御を目指しています。
Journal
ACS Nano Medicine
Method of Research
Systematic review
Subject of Research
Cells
Article Title
Negative Surface Charge and Membrane Lipid Composition Underlying Extracellular Vesicle Function
Article Publication Date
11-Mar-2026
COI Statement
The authors declare no competing interests.