News Release

“首”がない魚における頭部安定化行動とその神経回路機構を発見

“首”を使って頭部を安定させる仕組みの起源に迫る

Peer-Reviewed Publication

National Institutes of Natural Sciences

頭部上げ、頭部下げ姿勢時に見られる頭部安定化行動とその回路メカニズム

image: 頭部上げ姿勢時に、魚は胴体を腹側に屈曲させる(Ventral flexion)ことで、わずかではあるが頭部を安定化させる。同様に、頭部下げ姿勢次には、胴体を背側に屈曲させる(Dorsal flexion)ことで、頭部を安定化させる。頭部上げ傾斜時の腹側屈曲はオレンジで示す回路(前庭神経核〜網様体脊髄路ニューロン〜脊髄運動ニューロン〜腹側特殊筋)で引き起こされ、頭部下げ傾斜時の背側屈曲は緑で示す回路(前庭神経核〜脊髄運動ニューロン〜背側特殊筋)で引き起こされる。 view more 

Credit: Shin-ichi Higashijima National Institutes of Natural Sciences Exploratory Research Center on Life and Living Systems 5-1 Higashiyama, Myodaijicho Okazaki, Aichi 444-8787 Japan +81-564-59-5875

多くの動物にとって姿勢制御は基本の動作であり、特に頭部安定性は安定的な感覚入力や正確な空間把握・効率的な運動出力に関わる重要な機能です。ヒトをはじめとする四肢動物は首を持ち(頭蓋骨が胴体の骨から離れており、その間に“首”という構造がある)、傾きに応じて首の筋肉を収縮・弛緩をすることで頭部を空間的に安定化させます。これは一種の反射であり、前庭頸反射と呼ばれています。一方、魚では頭蓋骨が胴体の骨に直接接続しているため、“首”という構造を持たないことが知られています。これら“首”を持たない魚に、四肢動物の前庭頸反射に相当する頭部安定化行動があるか否かは不明でした。

大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生命創成探究センター(ExCELLS)/基礎生物学研究所の椙岡 拓己研究員、谷本 昌志助教、東島 眞一教授のグループは、ドイツMax Planck Institute for Biological IntelligenceのHerwig Baier博士、Tod R. Thiele博士とともに、比較的体の構造が単純で、神経回路の研究がしやすいゼブラフィッシュ仔魚を用いて研究を行いました。まず魚の行動を詳細に観察することで、体の傾き角度に応じて、胴体の屈曲度合いが変化することを発見しました。この胴体屈曲は、水中で頭部の向きをより水平方向に移動させ、結果的に魚の頭部を安定化させると考えられます。次に、研究グループは、傾斜中のゼブラフィッシュの細胞活動測定や、細胞破壊実験を行い、胴体屈曲に関わる神経回路・筋肉の特定に成功しました。

形態的な“首”を持たない魚の頭部安定化行動はこれまで分かっていませんでしたが、今回、魚にも頭部安定化行動が備わっていることが明らかになりました。魚は“首”を持たないので、頭部安定化行動に関わる筋肉は “首の筋肉”とは言えません。しかしながら、頭部安定化行動に関わる神経回路は、哺乳類の前庭頸反射の神経回路と、回路の構造や構成するニューロン群の点で複数の共通点があることがわかりました。これらのことから、魚で見られる胴体屈曲は、前庭頸反射の進化的な前駆的機構である可能性が示唆されます。本研究は、前庭頸反射の起源につながることが期待され、さらには“首“の進化にも迫ることができる可能性を秘めています。


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