image: Overview of the experiment. Left: Participants observed stimuli presented on a monitor. Right: Example stimulus.
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<概要>
豊橋技術科学大学情報・知能工学系視覚行動研究室、視覚認知情報学研究室、認知神経工学研究室の研究チーム(代表者:田村秀希准教授)は、同じ物体画像を見ていても「光沢があるか」を評定するときと「魅力的か」を評定するときでは、瞳孔反応の時間的なパターンが異なることを明らかにしました。研究チームは、日常的な物体60種類の画像を実験刺激に用い、参加者が「光沢感」と「魅力度」をそれぞれ評価している間の瞳孔径を計測しました。二つの課題では全く同じ画像群を使用していました。実験の結果、光沢感を高く評価した場合には、刺激呈示後約1秒を中心とする比較的早い時間帯で瞳孔がより強く縮小しました。一方、魅力度を高く評価した場合には、より遅い時間帯で瞳孔がより散大する傾向が見られました。これらの結果は、同じ物体を見ていても、何を評価しているのかによって、瞳孔反応の時間的特徴が異なる可能性を示しています。
本研究の成果は、2026年9月1日付でJournal of Vision誌に掲載されました。
https://doi.org/10.1167/jov.26.9.1
<詳細>
私たちの瞳孔は、周囲が明るくなると小さくなり(縮小)、暗くなると大きくなります(散大)。こうした物理的な明るさだけでなく、近年の研究では瞳孔の大きさは注意や感情、物体の見え方によっても変化することが分かってきました。研究チームはこれまでに、日常的な物体に対して、より光沢があると感じる時ほど瞳孔が強く縮小することを報告していました。一方、私たちは物体を見るとき、光沢のような視覚的な表面特性の評価だけでなく、「魅力的である」といったより感性的な評価も行っています。そこで本研究では、異なる評定タスクが瞳孔反応の時間変化にどのように反映されるのかを調査しました。
実験には24名が参加し、身の回りにある物体60種類の画像について、「どの程度光沢があるか」と「どの程度魅力的か」をそれぞれ7段階で評定しました。画像は3秒間呈示され、その間の瞳孔径を計測しました。この時、瞳孔は明るさに敏感であるため、刺激画像の輝度の平均や分散などの画像統計量も統制しました。
実験の結果、いずれの課題でも画像呈示後に瞳孔が縮小し、その後徐々に回復する反応が観察されました。そして、評定タスクによってその時間的な特徴が異なりました。光沢評定タスクでは、物体をより光沢があると評価した場合ほど、画像呈示後約1秒付近で瞳孔が大きく縮小しました。これに対して魅力度評定タスクでは、魅力度を高く評価した場合に、より遅い時間帯で瞳孔がより散大する傾向が見られました。さらに、時間主成分分析や一般化加法モデルといった分析手法を用いて瞳孔反応の時間変化を解析したところ、評定値と瞳孔反応との関係が、課題と時間によって系統的に変化することが示されました。
これらの結果は、光沢のような視覚的な表面特性の評価と、魅力度のような感性的な評価では、その情報が瞳孔反応に反映される時間的特徴が異なる可能性を示唆しています。研究チーム代表の田村秀希准教授は「今回の結果は、瞳孔反応が物体そのものの視覚的特徴だけでなく、観察者がその物体について何を評価しているのかによっても変化することを示唆しています」と述べています。
<今後の展望>
本研究では、光沢感と魅力度の二つを評定対象としました。今後は、透明感、粗さ、柔らかさなど、他の材質・表面特性についても調べることで、異なる知覚や感性的評価が瞳孔反応にどのように表れるのかを検証していきます。
<論文情報>
Tamura, H.*, Nakauchi, S., & Minami, T. (2026). Task-dependent pupillary responses to glossiness and attractiveness judgments. Journal of Vision, 26(9):1, 1–18. https://doi.org/10.1167/jov.26.9.1
(*: 責任著者)
<謝辞>
This work was supported by JSPS KAKENHI (Grant Numbers JP25K21323 to H.T., JP25H01141 to S.N., and JP23KK0183 to T.M.)
本研究の一部は、世界で活躍できる研究者戦略育成事業(文部科学省)の採択事業である「世界的課題を解決する知の「開拓者」育成事業」(T-GEx)の支援を受けたものです。
Journal
Journal of Vision
Method of Research
Experimental study
Subject of Research
Not applicable
Article Publication Date
1-Sep-2026