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フノリ(布海苔)の分類再検討で複数の未分類種を発見

Peer-Reviewed Publication

Kobe University

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image: Cross-section of Ryukyu-funori (Gloiopeltis compressa) view more 

Credit: Kobe University

神戸大学内海域環境教育研究センターの羽生田 岳昭助教、川井 浩史教授、理学研究科生物学専攻修士2年 山村健将らを中心とする国際共同研究グループは、これまで世界で5種、日本では3種とされていた「フノリ (布海苔)」の仲間 (紅藻フノリ属) が、実際には複数種が分類されず混同されており、日本に分布するフノリ属だけで10種以上存在することを明らかにしました。またこのうち、主に沖縄に分布しこれまで「ハナフノリ」と混同されていたフノリ属の種を「リュウキュウフノリ」と命名しました。

2編の論文からなる本研究により、日本はフノリ属のほとんどの種が分布する種多様性が非常に高い地域であることが確認されました。

この研究成果は、10月14日に国際藻類学会誌「Phycologia」、および10月29日に日本藻類学会英文誌「Phycological Research」へそれぞれオンライン掲載されました。

ポイント

    >「フノリ (布海苔)」は糊の原料、また食用にもされている海藻の一種。

    >世界で5種が知られ、日本にはそのうち3種が分布しているとされていた。

    >本研究により、複数の種が分類されず混同されてきたことが明らかとなった。

    >日本に10種以上が分布することが明らかとなり、このうち主に沖縄に分布し、これまで「ハナフノリ」とされてきたフノリ属の種を「リュウキュウフノリ」と命名した。

    >日本に広く分布する「フクロフノリ」とされているもののうち、「真のフクロフノリ」を明らかにした。

研究の概要

「フノリ (布海苔)」は古くから糊の原料とされ、また味噌汁の具などとして食用にもされている海藻の一種です。フノリの仲間 (紅藻フノリ属:Gloiopeltis) は、現在、世界で5種が知られており、日本にはそのうち3種、フクロフノリ、マフノリ、ハナフノリが分布するとされていました。

しかし今回、本研究チームは分子系統学的な解析結果から、日本に分布しているフノリ属だけでも10種以上が存在することを明らかにしました。

研究の内容

フクロフノリとされてきた種の分類

本研究チームの解析結果から、これまで一般に「フクロフノリ(Gloiopeltis furcata)」とされてきたものは、実際は未だ命名されていないものも含めて4~5種類が正しく分類されずに混同されてきたことが分かりました。

しかし、フクロフノリという種がはじめに記載された論文にはその産地が明確に示されておらず、また形態からの区別も困難であるため、どの種が「真のフクロフノリ」に相当するかは、明らかではありませんでした。そこで「真のフクロフノリ」を明らかにするため、19世紀のロシア船による調査航海で採取・命名され、現在はロシア・コマロフ植物学研究所に収蔵されているタイプ標本 (学名の基準となる標本) の遺伝子解析を行いました。その結果、この標本はアラスカ州シトカで採集されたものであり、この種 (「真のフクロフノリ」) は日本では東北と北海道にのみ分布していることが明らかになりました。ちなみに、フクロフノリはこれまで北海道から沖縄まで広い範囲に分布するとされてきたことから、東北より南に分布するものはいずれも別の種であると考えられます。これらの未だに命名されていない種の分類について、現在研究を継続しています。

ハナフノリとされてきた種の分類

フクロフノリより一般に小形で、より多く枝分かれすることで区別される「ハナフノリ (Gloiopeltis complanata)」とされてきた種も、今回の研究で2種が含まれることが明らかになりました。

そこで、その2種のいずれが「真のハナフノリ」であるかを明らかにするため、19世紀にペリー提督が率いる黒船艦隊によって日本で採取され、最終的にはアイルランドの研究者によって分類・命名された標本 (現在はアイルランド・トリニティカレッジの植物標本室収蔵) について、遺伝子解析を行いました。その結果、これまでハナフノリと同種であるとされてきたCaulacanthus compressusという種が独立したフノリ属の種であることを明らかにし、和名「リュウキュウフノリ」(学名:Gloiopeltis compuressus) と命名しました。この種類は、主に沖縄に分布しており、その藻体が真のハナフノリより顕著に小さいという特徴があります。

日本では未確認の種の発見

また今回の研究で、最近韓国において記載された種でこれまで日本では確認されていなかったGloiopeltis frutexが九州にも分布することも明らかになり、日本はフノリ属のほとんどの種が分布する種多様性が非常に高い地域であることが確認されました。

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