News Release

狩猟肉がもたらすもの:日本の狩猟文化における狩猟肉の調査報告を刊行

Book Announcement

Kumamoto University

Book Cover

image: The hunter on the cover of the book prays to the mountain god to be forgiven for hunting in the mountains that day. view more 

Credit: Prof. Shinjilt

日本の伝統的な食べ物というと何を思い浮かべますか? 魚介類? 米?

あまり知られていないことですが、日本にも古くより狩猟文化が根付いています。日本全国で鹿や猪、熊などの動物を獲物として狩猟が行われ、その肉は特に山間部では貴重なタンパク源として消費されてきました。最近ではジビエとしても注目されてきています。

狩猟は日本中で行われてきましたが、日本の南西部にある熊本県の山間部でも、狩猟文化が根付いています。この地方では特に全国で初めて野生鳥獣肉(狩猟肉)を取り扱い、商業的に流通させた精肉店があり、近年も野生鳥獣肉の解体処理場を新たに建築するなど、古くより狩猟を行い続けている地域です。

熊本大学のシンジルト教授は社会人類学を専門にし、アジア社会における人間と動物の関係について研究を進めています。今回、熊本大学文学部の学生たちが、熊本県南東部に位置する3つの市町村における現地調査で得られたデータを基に調査結果を本にまとめました。野生動物はいかに肉へと変わり、その肉はいかなる人間関係や内面世界を作り出すのかを明らかにしたものです。本著は「肉をつくる:狩猟、解体、精肉」、「肉がつなぐ:仲間、親族、地域内外」、「肉がつくる:意味、躊躇、感謝、味覚」の三部から構成され、現代日本における狩猟肉の生成とその役割を浮き彫りにしました。

今回インタビューや狩猟への同行調査に参加した13名の学生達は、多くの現代人と同じく狩猟経験はもとより動物一般とほとんど接点がありませんでした。彼らは現地調査を通じて、仕留め・さばきといった肉をつくる行為がいかにして日常的なものになりうるかを知り、「特別な人間がする残酷な行為」という固定観念を排しています。また、狩猟肉が諸々の関係を結んでいるという現場の事実から、肉は単なる「もの」に過ぎないのだという認識の浅さに気づいたことを本著の中で報告しています。さらには、特定の物事の意味付け、ある行為に対する躊躇い、外部に対する謝意、味覚の在り方などの猟師の内面世界というものも、狩猟肉の存在によって大きく規定されていることを考察することができました。

* 本著は非売品です。また、日本語のみで構成されています。

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