News Release

難治性の涙小管狭窄症・閉塞症に対する新しい手術を開発

結膜鼻涙管吻合術

Peer-Reviewed Publication

Toho University

結膜鼻涙管吻合術(イラスト)

image: (a)鼻涙管と涙嚢の内側壁全体を露出させ、鼻涙管をできるだけ下方で切断する。(b)涙嚢の上端のみが結合している状態で涙嚢から鼻涙管を剥離挙上する。(c)顕微鏡下に内眼角の結膜に切開をおいて鉗子を刺入し、鼻内内視鏡でも確認しながら鼻涙管の断端を内眼角方向に引き出して結膜切開部と縫合する。最後に涙嚢内壁を大きく開放して涙の出口を作成し、内眼角に新設した開口部から鼻内までシリコンのチューブを挿入し、新しい涙道が安定したら抜去する。 view more 

Credit: 牛尾 宗貴

東邦大学医療センター佐倉病院耳鼻咽喉科と眼科のグループは、難治性の涙小管狭窄症・閉塞症に対する新しい手術「結膜鼻涙管吻合術」を開発しました。
 上眼瞼(うわまぶた)の裏側にある涙腺で分泌された涙は、内眼角(眼裂の内側)にある上・下涙点から吸引され、上・下涙小管を経由して涙嚢、鼻涙管を通り、鼻腔内に排泄されます(図a)。この涙の流れる経路を涙道と呼んでいます。涙道のいずれの部位で狭窄や閉塞が生じても涙の流れに問題が生じ、常に涙っぽい感じや、泣いていないのに涙が溢れたり、また目やにが増えたり等の症状に悩まされることとなります。今回開発した「結膜鼻涙管吻合術」は、涙道のうちの涙小管の狭窄や閉塞に対する手術です。
 涙小管狭窄症・閉塞症に対しては、まずは経過観察や点眼薬の処方などが行われますが、これら保存的治療が無効であった場合には、細いシリコンのチューブを涙小管に通して拡げる涙小管形成術が行われます。一方、この涙小管形成術でも涙小管の開通を維持できなかった場合は、外切開による結膜涙嚢吻合術、本邦では保険適応外のジョーンズチューブ留置術などが行われてきました。ただ、外切開による結膜涙嚢吻合術では鼻の脇に2 cmほどの傷が残りますし、ジョーンズチューブ留置術では内眼角から鼻内に細いガラス管を半永久的に入れておく必要があります。ジョーンズチューブは異物ですので、定期的な洗浄や交換が必要なことや感染などによる問題もありました。「結膜鼻涙管吻合術」は外切開も半永久的な異物の留置も必要ない新しい術式です。
 「結膜鼻涙管吻合術」は全身麻酔で行います。まず、耳鼻咽喉科医師による鼻腔内の操作から開始します。内視鏡下に鼻涙管と涙嚢の内側壁全体を露出させ、鼻涙管をできるだけ下方で切断し、涙嚢の上端のみが結合している状態で涙嚢から鼻涙管を剥離挙上します(図b)。続いて、眼科医師が結膜の操作を行います。顕微鏡下に内眼角の結膜に切開をおいて鉗子を刺入し、鼻内内視鏡でも確認しながら鼻涙管の断端を内眼角方向に引き出して結膜切開部と縫合します(図c)。最後に涙嚢内壁を大きく開放して涙の出口を作成し、内眼角に新設した開口部(涙の入口)から鼻内までシリコンのチューブを挿入して、新しい涙道が安定したら抜去します。
 「結膜鼻涙管吻合術」は従来の外切開による手術やジョーンズチューブ留置術の問題点を克服し、外切開も半永久的な異物留置も必要ない術式です。涙小管狭窄症・閉塞症で流涙に悩む患者さんに新しい選択肢を提供し、QOL向上に寄与できる術式であると考えています。

 

原著論文情報

雑誌名
Laryngoscope

論文タイトル
Conjunctivoductivo-dacryocystorhinostomy: A novel surgery for intractable canalicular obstruction

著者
牛尾 宗貴(東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科)
昌原 英隆 (東邦大学医療センター佐倉病院 眼科)
坂本 理之 (聖隷佐倉市民病院 眼科)
太田 康  (東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科)
前野 貴俊 (東邦大学医療センター佐倉病院 眼科)
鈴木 光也 (東邦大学医療センター佐倉病院 耳鼻咽喉科)

DOI番号
10.1002/lary.29861


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