image: Researchers at The University of Tokyo use numerical simulations to model the process called devitrification during which glasses crystallize, which may help improve the long-term stability of glassy materials, like pharmaceuticals and smartphone screens. view more
Credit: Institute of Industrial Science, the University of Tokyo
田中 肇 東京大学名誉教授(研究当時:東京大学 生産技術研究所 教授、現在:東京大学 先端科学技術研究センター シニアプログラムアドバイザー)、東京大学 生産技術研究所の柳島 大輝 特任研究員(研究当時、現在:京都大学 助教)、ルッソ ジョン 特任助教(研究当時、現在:ローマ大学 准教授)、オックスフォード大学のデューレンズ ルール 教授の共同研究グループは、数値シミュレーションを用いて、ガラス状態を安定化するための新たな方法を発見した。
「ガラス」といえば「窓ガラス」が連想されるが、一般には、液体のような乱雑な構造を持ったまま固まった固体全般を指す。ガラス状態にある物質は、有用な固体材料として非常に注目されているが、結晶とは大きく異なり、長期間の安定性に問題がある。例えば、長い時間をかけてその性質が徐々に変わるエイジング現象やガラスの内部に微結晶ができる脱硝現象が知られている。
これまで、ガラス状態にある物質のエイジングや脱硝を防ぐために、温度を下げその進行を遅らせるアニール法などにより熱力学的に安定化する方法が行われてきた。本研究では、コロイド分散系のガラス状態について、粒子の密度を均一化するという全く新しい方法で、非常に高い安定性を実現することに成功した。この原理は、ガラス状態を「力学的に均一化」する、すなわち、粒子間にかかる力がどの粒子に対しても釣り合った力学的に均一な状態にするという力学的安定化法であり、従来の熱力学的な安定化法とは本質的に異なる全く新しい物理原理を提供する。またこの結果は、密度の超均一性と、時間的に変化しない安定なガラス状態との間に深い関係があることを示している。この発見は、熱力学的に非平衡なガラスを機械的に安定化させるための新たな基本原理を提供するのみならず、超安定なガラスを実現するための新たな道を拓くものと期待される。
###
この研究成果は、2021年11月16日に「Physical Review Letters」に掲載された(DOI:10.1103/PhysRevLett.127.215501)。
Journal
Physical Review Letters
Article Title
Towards glasses with permanent stability
Article Publication Date
16-Nov-2021