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6ヵ国での研究によると、地域社会型警察活動で警察と地域の関係が向上することはないと思われる

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

これまでのエビデンスに反して、発展途上国6ヵ国での新しい現地調査で、地域社会型警察活動によって市民と警察の間の信頼が向上することはなく、犯罪が減ることもなかったことが明らかになった。この結果から、地域社会型警察活動 ―― 広く称賛されている警察改革策 ―― ではすべての状況下で警察と地域社会の関係が向上するとは限らないと考えられること、さらに、漸進的な警察改革を成功させるには法執行機関はまず先に構造改革を実施する必要があることが示唆された。地域社会型警察活動は従来の警察活動とは異なり、信頼を育む、正当性を高める、警察と市民の連携を向上するといったプロセスに市民の参加を求めている。この策は世界中で試されているものの、その有効性はアメリカ、イギリス、オーストラリアといった主に裕福な地域で評価されているにとどまり、グローバルサウスの発展途上国からはエビデンスがあがっていない。Graeme Blairらはブラジル、コロンビア、リベリア、フィリピン、ウガンダ、パキスタンの警察機関との協力で、世界的なベストプラクティスから分かった地域にふさわしい地域社会型警察活動介入の実施を支援した。続いて、地域社会型警察活動という策が警察に対する市民の信頼と協力を促進したり、犯罪率を下げたりすることにつながったどうかを評価すべく、6つの共同研究を進めた。「この試みの設定には、これを地域社会型警察活動にとってのみならず、より一般的に、警察業務にとっても示差的なものにする協調的な取り組みが必要であった」とSantiago Tobónは関係するPerspectiveで書いている。Blairらは、先進国でのこれまでのエビデンスに反して、地域社会型警察活動によって市民と警察の間の信頼は向上せず、犯罪も減らなかったことを発見するとともに、研究を実施した地域でこういった策が失敗した説明になると思われる理由を複数特定した。警察のリーダーシップによる優先順位付けの欠如、地域社会型警察活動を行う警察官と警察改革を支持するリーダーのローテーション、市民が明示した懸念事項に継続的に取り組む警察力の限界などである。成功を妨げるこういった要因は調査地域で共通しているものの、これらはグローバルサウスに限ったものではないとBlairらは述べている。したがって、アメリカのような裕福な国での地域社会型警察活動の有益な効果は、地域社会型警察活動介入そのものの成果だけではなく、それらの地域特有の重大な社会的および文化的情勢も反映していると考えられる。「Blairらの研究は、警察の信頼と正当性の決定要因は少なくとも発展途上国においては依然として明確になっていないことを示唆している。思いも寄らない結果であったのとは関係なく、今回の研究は発展途上国で犯罪や暴力と戦うための協調的な試みは可能だという概念実証であった」とTobónは書いている。

 

こういった動向に関心のある記者の皆様へ。2021年2月にScienceに掲載したイリノイ州シカゴの大規模データセットを使用した研究で、広く提案されているもう一つの警察活動改革「警察活動の多様化」の効果についてもより詳しい見解を載せています。著者らは次のように結論付けています。「多様化の効果はおそらく単純でも一枚岩でもない。警察官は多面的である。効果的な人事改革の策定に必要なのは、多様性戦略に通常使用される大雑把な人口統計学的分類にとらわれない思考と、多面性によって警察と警察が奉仕する市民の関係がどうなるかの判断だと思う。」また2021年10月のScienceのspecial issue、“Criminal Injustice”でも関連するテーマを深く検討しています。


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