News Release

振動減衰メカニズム解明へ向けたX線CTによる内部観察事例

次世代機能性ゴム材料の開発に向けて

Peer-Reviewed Publication

Toyohashi University of Technology (TUT)

マルチスケールでのひずみ評価

image: 天然ゴム単体(NR only)では均一に変形していくが、繊維状充てん剤あり(With fiber)では不均一に変形していく様子が見られる。 view more 

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<概要>

豊橋技術科学大学機械工学系と兵庫県立工業技術センター 長谷 朝博 博士(現・産業技術総合研究所),同志社大学理工学部 辻内 伸好 教授,伊藤 彰人 教授の研究チームは、シンクロトロン放射光によるX線CTを用いて微粒子の複合化に伴うゴム材料の振動減衰の向上が微細構造の変形挙動に関係することを明らかにしました。マクロな変形評価(mmオーダー)とミクロな評価(X線CTによる空間分解能500nm)を同時に行うことで、材料内部の変形の不均一性が数十mmのスケールで確認できることを突き止めました。本研究成果は、Polymer Testing誌に 2022 年 5 月 9 日付けでオンライン公開されました。

  https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0142941822001490

<詳細>

機械構造物では振動や騒音を適切に抑えることは性能確保や安全な稼働を行う上で必要不可欠であり、設計限界や運用限界は振動の大きさを抑える減衰特性によって決まる事例が多くあります。一般にゴムの変形によるエネルギー損失(振動減衰の決定因子)は,ポリマーに配合された充てん剤粒子の配列変化により生じる損失(ペイン効果)として説明され、巨視的力学物性の経験則から充てん剤の分散、界面、配向が主要制御因子と考えられています。しかしながら、それら主要制御因子から減衰特性を予測する技術の確立までには至っていません。その原因の一つに三次元構造の観察が難しいという点が挙げられます。

高分子を中心とした材料の三次元構造の観察法としては透過型電子顕微鏡によるコンピュータトモグラフィー(Transmission electron microtomography,以下TEMT),X線CT (X-ray Computed Tomography)が挙げられます。TEMTは試料の厚みを数百nmにする必要があること,アーティファクト(偽画像)が発生しやすいという問題があります。X線CTでは画像のコントラストが得にくいという問題があり、高分子材料への応用例がTEMTなどに比べると少ない状況です。また、ゴム材料の場合、X線曝露による加硫反応によって物性変化を起こしてしまうといった問題もあります。近年、画像センサの感度が改善されてきたこと、高速撮影技術が向上したことに伴い、短い時間のX線露光でコントラストのあるCT像の取得が可能となりました。

そこで、研究チームはシンクロトロン放射光施設を利用し、微小な変形場での微粒子充てんゴム材料のマイクロX線CTを実施しました。X線CT装置に搭載可能な小型引張試験機を開発し、引張試験によるマクロな変形挙動を同時に評価しました。マクロな評価から弾性変形領域と判断できる変形領域において、変形量に応じてミクロな変形は不均一になっていくことが明らかになりました。

<開発秘話>

 振動分野では減衰特性は動的条件下で確認されるパラメータです。一方で、材料開発の視点から見ると構造が決まった段階で減衰特性は決まっているはずなので、静的な変形であっても何か違いが現われるだろうという期待からマイクロX線CTによる計測を試みました。

<今後の展望>

現在、動的X線CTの実施を試みています。メソスケールでの内部構造の変形挙動が明らかになり、充てん剤に関わる制御因子と減衰特性の関係が明らかになることを期待しています。

<論文情報>

M.Matsubara, S.Teramoto, T.Komatsu, S.Furuta, M. Kobayashi, S. Kawamura, A. Nagatani, N.Tsujiuchi, A.Ito (2022). Three-dimensional strain evaluation of short-fiber-reinforced natural rubber using micro X-ray computed tomography.

Polymer Testing, https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0142941822001490.

 

本研究はJSPS科研費(JP16K18041,JP18K13715)の助成を受けたものです.また,文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成25年~平成29年, 同志社大学)の支援を受けました.ここに記して謝意を表します.


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