研究により、確認されていなかったヒヒの交雑に対する選択が明らかに；ヒトの進化の生きたモデルとしての他の霊長類の価値も強調される

アフリカを拠点にした新しい研究により、野生のヒヒ類における種間の交雑に対して、古代ホミニンの場合で説明されてきたものと驚くほど似た選択が隠れていたことが明らかになった。ゲノムデータと長期野外観測データの両者に基づいたこの研究結果は、ヒトの進化を解明するための、特にヒト系統だけでの研究が不可能な現象のためのモデルとして、他の生きた霊長類が重要な役割を果たすことを強調している。遺伝的混合は霊長類の進化の根幹だと広く考えられている。現生人類の祖先がネアンデルタール人や今は絶滅した他の近親ホモ族と混ざり、ヒトの様々な形質やヒトの起源についての現在の考えを形作る遺伝的遺産を今日に伝えたことはよく知られている。これまでの研究から雑種個体に対する選択はホミニンの交雑に不利に働いてきたと推測されているが、そういった仮説の検証は依然として難しい。しかし、雑種形成は私たちの近親霊長類の多くで見られ、それは他の生きた霊長類がヒト系統の遺伝的混合を解明するための情報を提供してくれることを示唆している。Tauras Vilgalysは野生での霊長類の遺伝的混合を調査するために、ケニアのアンボセリ地域に生息するキイロヒヒとアヌビスヒヒ（ヒトの遺伝研究のための2つの一般的な霊長類モデル）間における雑種形成を調べた。彼らは、個体数の動態と統計についての50年間の野外観測データと約9世代にわたる雑種ヒヒのゲノムデータを組み合わせた。行動と生活史に関する野外観測データでは雑種ヒヒの適応度は明らかに損なわれていないことが示され、一方、ゲノム解析では旧人類での結果と一致する遺伝的混合に対する選択があるという対照的なエビデンスが明らかになった。この結果は、度重なる種間の遺伝子流動に直面する中で霊長類の分岐が維持されてきた仕組みの説明に役立つと考えられる。Vilgalysらはしかし、雑種に対する選択がどう起こるかは定かではなく、今後の研究で取り組むべき重要な疑問だと述べている。