News Release

A Sticky Colloidal Sciences Question Now Solved

Peer-Reviewed Publication

Institute of Industrial Science, The University of Tokyo

コロイドゲルはどのようにして固まるのか?

image: 東京大学 先端科学技術研究センターの田中 肇 シニアプログラムアドバイザー(特任研究員/東京大学名誉教授、研究開始当時:東京大学生産技術研究所 教授)、同大学 生産技術研究所の鶴沢 英世 協力研究員(研究当時)の共同研究グループは、ゲルの固体性は、コロイドが溶媒と相分離する過程で、固さを持つ最小の構造ユニットである四面体構造の形成を起点とした逐次的で階層的な構造形成によって現れることを発見しました。コロイドゲルの固体性に関する新たな知見を提供し、コロイドゲルの長時間安定性の向上や望ましい機械的性質を持つ新材料などの開発につながると期待されます。 view more 

Credit: 東京大学 生産技術研究所

 東京大学 先端科学技術研究センターの田中 肇 シニアプログラムアドバイザー(特任研究員/東京大学名誉教授、研究開始当時:東京大学生産技術研究所 教授)、同大学 生産技術研究所の鶴沢 英世 協力研究員(研究当時)の共同研究グループは、コロイド分散系のゲル化の過程を、共焦点レーザ顕微鏡による一粒子レベルの観察により、液体状態から固体状態が形成される構造形成の素過程に迫ることで、ゲルの固体性がどのような機構で発現するかについて調べ、ゲルとガラスの固体性の発現機構が大きく異なることを明らかにしました。

 これまでは、コロイドゲル化における相分離の凍結ネットワーク構造の腕の太さが高々数粒子程度であることを考えると、粒子レベルで多孔的な構造を持つゲルと高密度に充填された構造を持つガラスとを同一視する従来の物理モデルには疑問が残ります。そこで、研究グループは、コロイドのモデル実験系を用いて実験を行い、共焦点顕微鏡を使用して一粒子レベルでゲル化の全過程を初期から追跡し、構造形成のダイナミクスを詳細に解析しました。その結果、ゲル化の際には、まず個々のコロイドが集まって四面体を形成し、それが結合して多四面体のクラスターを形成することがわかりました。このクラスターは、5つの四面体からなる双五角錐に配列し、さらに自己触媒的にさらなる成長が起こることで、中距離の非晶質秩序が形成され、それにより相分離のダイナミクスが凍結されることを明らかにしました。

 さらに、この階層的な秩序化は、基本的に自由エネルギーではなく、局所的なポテンシャルエネルギーによって駆動されていることから、相分離によって形成されるゲルと均質な状態でエントロピーの影響のもと自由エネルギーを下げるように形成されるガラスとでは、固さを持った非晶質秩序の形成機構が根本的に異なることを明らかにしました。

 本研究は、コロイドゲル化と固体化のメカニズムを解明したのみならず、生体におけるたんぱく質のゲル化の理解に役立つと同時に、望ましい機械的性質や長期安定性を持つコロイドゲルの開発につながる可能性があると期待されます。
 本成果は2023年5月22日(英国夏時間)に「Nature Physics」のオンライン速報版で公開されました。


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