新しい研究によると、Androidスマートフォンを用いた地球規模の地震検知・早期警報システムは、従来の地震観測網に匹敵する有効性で、地震活動のリアルタイム検知と救命警報の配信ができるという。地震が発生しそうな場所の予測が可能であるにもかかわらず、地震は世界中のコミュニティに深刻な脅威を及ぼし続けている。大規模な地震事象は、広範な人命の損失や負傷につながりうる。こうしたリスクを考えると、事前通知を出して人命を救う緊急地震速報(EEW)システムのような、防護対策が急務であることは明らかである。こういったシステムは、恒久的な地震観測網上に構築されることが多いが、地震多発国の多くでこの重要なインフラが不足している。一方、スマートフォンが世界的に普及したことで、地震警報を感知して配信するための強力なプラットフォームが構築された。スマートフォンのセンサーは、従来の地震観測所のセンサーほど正確ではないが、大きな地震の際に地面の揺れを検知することは可能である。
今回、Richard Allenらは、Androidスマートフォンの既存ネットワークを利用した地球規模の地震検知・警報システムの性能について述べている。Android地震警報(Android Earthquake Alerts、AEA)システムは、スマートフォンのセンサーを利用して地震活動を検知し、危険な揺れが始まる前にユーザーに早期警戒警報を配信する。著者らによると、この機能は、世界のスマートフォンの約70%を占めるAndroid端末にデフォルトで組み込まれているという。AEAシステムは、運用開始から最初の3年間(2021~2024年)に、98ヵ国でマグニチュード(M)1.9から最大7.8までの地震を月に平均312回検知した。M 4.5以上の地震ではユーザーに対して警報が出されることになっており、1ヵ月あたり約60回の地震で1,800万回の警報が出された。こうした警報の効果とユーザーの反応を評価するために、著者らは、システムがユーザー調査を通じて集めた任意のフィードバックに注目した。AESユーザーのフィードバックによると、受信者の85%が揺れを経験しており、36%が地震動の発生前に、28%が発生中に、23%が発生後に警報を受け取っていた。「AEAは、世界中に分散しているスマートフォンを利用すれば、確立した国家的ステムに匹敵する有効性で地震を検知し、大規模な警報を出せることを実証している」とAllenらは述べている。「どのEEWシステムにとっても、大地震は依然として最も重要かつ困難なものであるため、地球規模でのAEAの実施は、迅速かつ大規模なデータ収集とアルゴリズムへのフィードバックによって、検知の改善に役立っている」
Journal
Science
Article Title
Global earthquake detection and warning using Android phones
Article Publication Date
17-Jul-2025