News Release

重度のインフルエンザ感染症を生き抜くには、肺修復と免疫による損傷とのバランスの再調整が重要

Summary author: Walter Beckwith

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

重症インフルエンザ感染症から回復するには、ウイルスの制御に加え、肺の治癒を助けることが重要であることが、マウスを用いた新たな研究で示された。この研究では、中程度の抗ウイルス療法と免疫調節を組み合わせることで、重篤な感染症が進行した後でも損傷組織や肺機能が回復することが示された。この知見は、標準治療が有効でなくなった場合の重症急性呼吸疾患の転帰改善に向けた今後の臨床戦略の基礎となる。ワクチンや抗ウイルス薬が利用できるものの、インフルエンザやCOVID-19のような重篤な肺感染症は、肺炎や急性呼吸窮迫症候群を含む重症疾患に至ることがある。これらの疾患の重篤例および致死例は、ウイルス自体だけでなく、組織損傷や肺機能の喪失を引き起こす有害な炎症カスケードによって引き起こされることも多い。これらの疾患に対する現在の治療法のほとんどは、炎症またはウイルス複製のみを標的としており、すでに大規模な組織損傷が生じている場合には無効な傾向がある。そのため、現時点では進行期の疾患に対する治療法が不足している。

 

重症肺感染症における疾患進行のタイミングおよび組織損傷と修復のバランスをより深く理解するため、Hiroshi Ichiseらが致死性マウスインフルエンザモデルを用いて50種類を超える免疫調節アプローチを評価したところ、好中球除去を除き、単独で適用した場合に生存率を改善するものはなかった。これらの知見に基づき、Ichiseらは「転換点」モデルを提唱している。すなわち、初期のウイルス性および炎症性損傷が一定の閾値を超えると、炎症を制御するだけでは組織機能を回復できなくなる、というものである。Ichiseらは、後期のウイルス性肺炎およびおそらく他の急性呼吸器疾患においては、回復には炎症やウイルス複製の抑制ではなく、組織損傷と修復のバランスの再調整が重要であると主張している。回復に焦点を当てた戦略を検証するために、Ichiseらは、部分的なウイルス制御と、修復を促進するためのインターフェロンシグナル伝達の阻害、または免疫介在性損傷を抑制するための傷害性T細胞(CD8+)の枯渇のいずれかを組み合わせた。分子およびイメージング解析により、両方の治療法が組織の完全性と肺機能を維持・回復させることで致死率の低下に成功したことが明らかになった。


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