顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーモデルマウスの病態改善に成功
~鉄代謝とフェロトーシス経路を標的にした新たな治療戦略~
Kumamoto University
image: This study reveals abnormal iron accumulation in the muscles of patients with Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy (FSHD) and in mice expressing muscle-specific DUX4 (DUX4-Tg mice). Contrary to expectations, treatments involving iron chelation, an iron-deficient diet, or genetic modifications to inhibit iron uptake did not alleviate but instead worsened the pathology of FSHD in DUX4-Tg mice. Interestingly, supplementation with iron—either through a high-iron diet or intravenous iron administration—led to significant improvements in grip strength and running performance in these mice by suppressing DUX4-activated ferroptosis pathway. Image by Nakamura et al., originally published in Journal of Clinical Investigation, licensed under CC BY 4.0.
Source: https://www.jci.org/articles/view/181881
Credit: Nakamura et al.
FSHDは、遺伝性かつ進行性の筋疾患で、現在根本的治療法はありません。FSHDでは、DUX4という細胞毒性をもつ転写因子が骨格筋に誤発現します。DUX4の誤発現はFSHDの発症要因になると考えられていますが、DUX4がどのように細胞毒性を発揮し骨格筋に障害を与えるのか、そのメカニズムについてはあまりわかっていません。
今回、熊本大学発生医学研究所筋発生再生分野の中村晃大研究員、小野悠介教授らの研究チームは、DUX4 が誘発する細胞毒性に微量元素である鉄の代謝異常が関連することを見出し、FSHD の新規治療標的になり得ることを報告しました。
本研究では、FSHD 患者およびFSHD モデル(DUX4-Tg)マウスの骨格筋において鉄が異常蓄積していることを観察しました。そこで体内の鉄を減らすと病態が改善すると予想し、検証しました。DUX4-Tg マウスに、鉄キレート剤の投与、低用量鉄含有食の摂餌、あるいは遺伝子改変から細胞内鉄取り込みを阻害したところ、予想に反し、筋力低下等のFSHD 病態は改善されず、むしろ悪化させました。一方、意外にも、高用量鉄含有食の摂餌または鉄製剤を静脈投与すると、DUX4-Tg マウスの筋内異常鉄蓄積、握力、走力、自発的運動量等は著しく改善されました。さらに、骨格筋に発現したDUX4 は、鉄依存性細胞死であるフェロトーシス経路を活性化させることを見出しました。フェロトーシス関連化合物ライブラリーを用いたハイスループットスクリーニング*5 を実施したところ、フェロトーシス阻害剤フェロスタチン-1( Fer-1)を同定しました。DUX4-Tg マウスにFer-1 を投与すると握力や走力に顕著な改善効果が認められました。
以上の結果から、DUX4 が誘発する細胞毒性に鉄代謝異常をともなうフェロトーシス経路の活性化が関連することが明らかになりました。今後、さらなるメカニズムを解明し、有効かつ安全なFSHD 治療法の開発を推進します。
なお、本研究は熊本大学発生医学研究所細胞医学分野の日野信次朗准教授、東京科学大学難治疾患研究所の諸石寿朗教授、東京科学大学高等研究府の中山敬一特別栄誉教授、国立精神・神経医療研究センター神経研究所の斎藤良彦リサーチフェロー、西野一三部長との共同研究で行ったものです。
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