遺伝する遺伝子変異が喫煙歴のない人において肺がんリスクを高める可能性があり、稀なEGFR T790M変異の保有者では肺がんリスクが全体で約25倍高く、喫煙歴のない人の場合には62倍も高いことが、新たな研究で示されている。さらにこの研究では、米国の南部アパラチア地域の集団においてこの変異の存在率の追跡が行われた。この地域には、植民地時代に英国およびアイルランドからの入植者によりこの変異が持ち込まれたと考えられる。肺がん症例の大部分はタバコ使用と関係しているが、喫煙したことのない人における肺がんは世界的な健康上の懸念としてますます重大さを増しており、喫煙に関係する肺がんが減少し続けているにもかかわらず、この懸念はこれからもなくならないであろう。しかし、肺がんに寄与するこうした遺伝性の遺伝子要因については、あまり理解が進んでいない。そうした重要な一例がEGFR T790M変異で、これは遺伝性であり、肺腺がんのリスクを大きく高め、特にがんを引き起こす第二のEGFR変異と組み合わさると顕著である。しかし、この変異は極めて稀であるため、これまでの研究ではその存在率や、それがもたらす肺がんリスクを正確に定量することができなかった。
より信頼性の高い推定値を得る目的で、Jaclyn LoPiccoloらはEGFR T790M変異と肺がんの関連を評価するため、ヨーロッパ系の337万人の遺伝子データの解析を行った。その結果、遺伝性のEGFR T790M変異の保有者では、肺がんリスクが25倍高く、またこの関連は喫煙歴のない人で特に強く、リスクを約62倍高めることが分かった。対照的に、喫煙者の場合には肺がんリスクの上昇は約4倍であり、これらのことからT790M変異は肺がんの強力な危険因子であり、それは特に喫煙歴のない人で顕著なことが示された。さらに、T790M変異は他の種類のがんや呼吸器疾患とは有意に関連しないことも分かった。また、EGFR T790M変異の保有者は米国の南部アパラチア地域、特にテネシー州とアラバマ州に偏って集中していることも分かった。このことから、この変異は欧州で生じ、植民地時代に英国およびアイルランドの入植者によって南部アパラチア地域に持ち込まれ、この地域の比較的孤立した集団において高頻度で見られるようになったことが示唆される。Stephen Chanockは関連するPolicy Forumで、この研究とその結果について詳しく紹介している。
Journal
Science
Article Title
Germline EGFR T790M mutations and lung cancer risk in humans
Article Publication Date
17-Sep-2026