東グリーンランドイッカクが、脅威から逃れるときに「すくみ」反応と「逃走」反応を両方示すことが報告された。この逆説的な反応は非常に負担が大きく、哺乳類は驚いたときにすくみと逃走を同時に行うことはできないという哺乳類の逃避活動に関する現在の科学者の理解に意義を唱えるものである。歴史的にイッカクは、北極海の氷の下を住処にしていたため、あまりヒトに悩まされることがなかった。しかし最近数十年間、北極海の氷が減少したため変化が生じ、この種の動物がいつになく妨害を受けやすくなった。イッカクに対する人為改変の影響予測を開始するため、Terrie Williamsらは、網にかかったり打ち上げられたりした9頭の東グリーンランドイッカクに、特注の心電計、深度計、加速計を取り付けた。Williamsらは、自由にした直後ならびにそれ以降の通常の行動時(一部のイッカク)の生理的・行動的反応をモニタリングした。すると、イッカクは、心拍数減少(「すくみ」反応の特徴)ならびに心拍数増加(「逃走」の特徴)の両方を示したという。これらの共同的反応は心血管系に極度の負荷を与える。このことは、深海に潜る海棲哺乳類がなぜヒトによる妨害に非常に影響を受け、脆弱なのかに関する見識を示している。
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