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森林の炭素隔離能力は光合成以外の要素でも制限されている可能性がある

Peer-Reviewed Publication

American Association for the Advancement of Science (AAAS)

新しい研究によると、光合成と樹木の成長は異なる気候刺激に異なる反応をするという。このことから、現行の森林炭素隔離モデルは森林の大気中炭素貯蔵能力を過大評価している可能性が示唆された。今回の研究結果によって、樹木が隔離する炭素量を推定する際に、光合成以外のプロセスを考慮する重要性が明らかになった。光合成を通して、森林は大気中炭素を取り込み、木質バイオマスや土壌炭素として隔離する。現在、このプロセスによって人為的な年間炭素排出の約25%が相殺されている。大気中の二酸化炭素(CO2)が増加するとCO2施肥効果という現象によって光合成が促進されることから、森林によって炭素を隔離することは、気候変動を緩和するための魅力的な自然の解決策と見なされることが多い。光合成と樹木の成長は、概して大気中の炭素量によって制限されると想定されてきた。炭素が多いほど、よく成長して、多くの炭素を貯蔵するというわけである。しかし、そうでない事例を示す研究が増えており、森林の炭素貯蔵は気温や水分、栄養の利用性といったその他の要素に対して敏感であることが示唆されている。つまり、森林の炭素隔離は、地球全体の森林がもつ炭素貯蔵能力を予測するうえで、大きな不確実性要素といえる。森林の炭素取り込みと樹木の成長との関係について理解を深めるために、Antoine Cabonらは、世界中の78の森林で光合成により植物が取り込む炭素量を推定し、年輪データバンクの年輪形成データと比較した。Cabonらは、光合成(生産性)と植物の成長との間に強いデカップリングがあり、樹種や生態系の特性、気候条件によってかなり差が出ることを見出し、これら2要素の関係はこれまでの想定ほど直線的でないことを示した。この研究結果によって、特に寒くて乾燥した地域において樹木の成長が制限され、進行中の気候変動のもとで森林の炭素貯蔵能力が制約され続ける可能性があることが明らかになった。関連するPerspectiveではJulia GreenとTrevor Keenanが、「Cabonらが報告した研究結果は、気候変動と闘ううえで、自然の生態系を利用した炭素隔離や、植樹をはじめとする自然の気候変動対策の成否に影響を与える」と述べている。


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