9-Oct-2025
皆既日食の際に鳥は夜明けのような行動をとる
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
2024年4月の「Great American Eclipse(アメリカ横断皆既日食)」で真昼にもかかわらず夜のように暗くなった際、多くの鳥種において日周リズムと発声行動が劇的に変化し、ある鳥は鳴き止み、また別の鳥は急に鳴き出した。そして太陽が元の状態に戻ると、多くの鳥が「偽の夜明けの合唱」を開始し、新しい一日が始まったかのように鳴いた。新しい研究で市民科学、機械学習、大陸規模の自然実験を組み合わせたところ、光の乱れが鳥の行動に即時に影響を及ぼすことが明らかになった。鳥の日周リズムと季節リズムは、明暗の変化によって厳密に制御されている。では、皆既日食が起きたときのように、そのサイクルが突然中断された場合、どうなるのか? 過去の研究でも、日食が動物の行動に及ぼす影響を理解しようと試みられてきたが、動物がどのような反応をするかについては断片的または事例的な情報しか得られていない。Liz Aguilarらは、2024年4月の皆既日食(米国中部と東部の広範囲が、昼間にもかかわらず4分間近く暗くなる)を絶好の調査機会だと考え、光の急激な変化に対する鳥の反応について前例のない自然実験を行った。
2024年4月の皆既日食に向けて、AguilarらはSolarBirdというスマートフォンアプリを作成した。このアプリを使うと、ユーザーは日食期間中の鳥の行動をリアルタイムで記録できる。このアプリを使った市民科学者から、約5,000キロメートルにわたる日食経路で1万件近い観察記録が集まった。それと並行して、Aguiilarらはインディアナ州南部の複数地点に自律型録音装置を設置し、皆既日食の前、最中、後に合計約10万回の鳥の発声を録音した。そして、これらの録音をBirdNETという、種の鳴き声を識別し、発声活動を定量化できるAIシステムで分析した。その研究結果によれば、検出された52種のうち29種は、皆既日食のいずれかの時点で発声行動が顕著に変化したが、すべての種が同様に日食の影響を受けたわけではなかった。皆既日食が始まる数分前、空が暗くなるにつれて11種が普段より盛んに鳴き始めた。暗くなった約4分間に反応したのは12種で、そのなかには鳴き止んだ種もいれば、盛んに鳴き始めた種もいた。最も強い反応が見られたのは太陽が元の状態に戻ったときであり、19種が偽の夜明けの合唱のように歌い出した。アメリカフクロウは通常の4倍の頻度で鳴き、夜明け前に鳴くことで有名なコマツグミは通常の6倍の頻度で鳴いた。Aguilarらによると、こうしたパターンから、日食によって鳥の生物時計が一時的にリセットされ、鳥は新しい一日が始まったときのように行動したことが示唆されるという。
この論文にご興味のある記者の方へ:2025年8月のScienceに掲載されたResearch Articleでは、光害が鳥の発声行動に及ぼす影響を取り上げています。そのBrent Peaseらの研究によると、光害がある環境では、鳥の鳴く時間が概して1時間近く長くなり、特にその傾向が顕著なのは眼が大きい鳥や、巣が開放型の鳥、渡り鳥、生息域が広い鳥、そして繁殖期間中の鳥であると示されています。
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