17-Jul-2025
ワクチン接種で気候変動によるマラリア制御の混乱が軽減できる
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
新しい研究によると、マダガスカルでは熱帯低気圧でマラリア制御の取り組みが中断することによって、特に子供の間でマラリア感染が著しく急増するという。しかし、今回の研究結果により、新たに導入された効果が長く持続するワクチンがこれらの制御策中断時における感染の軽減に役立つことが示された。このことはマラリア感染リスクの高い地域における気候変動に強いマラリア制御策への道筋を示している。マラリアは、すでに世界的な健康上の根強い課題ではあるが、蚊の動態を変える気温上昇のみならず、熱帯低気圧といった極端な気候イベントをも通じて、気候変動がもたらす新たな脅威に直面している。こういった災害によって、特にケアとマラリア制御の継続的な実施が極めて重要な高負担地域では、公衆衛生インフラが著しく混乱し、マラリアの予防と治療が制限され、感染リスクが上昇することがある。しかし、そう懸念されてはいるものの、気候に関連する混乱がマラリア制御にどう影響するかについてのデータは依然として少ない。マダガスカル - マラリア高負担国 - では、特に熱帯低気圧の頻度と強度の上昇による気候変動の影響が次第に増大してきており、それによって医療インフラが繰り返し深刻な被害を受けている。
Benjamin Riceらは、マダガスカルのマナンジャリ地域の500世帯を対象とした長期コホート研究を用いて、熱帯低気圧Batsirai(2022年)とFreddy(2023年)の前後における20,718件のマラリア感染の観察記録を分析した。これにより彼らは、極端な気象イベントといった厳しい状況下で、様々なマラリア介入がどの程度成果を上げたかを評価した。その結果によると、マダガスカルでは熱帯低気圧によってマラリアの予防や治療プログラムを含む最も重要な公衆衛生介入が混乱することで、マラリアの感染及び再感染のリスクが著しく上昇するという。熱帯低気圧に続く数ヵ月間、マラリア感染は特に子供の間で急増した。高伝播地域では、学齢期にある子供の最大半数と学齢期前の子供の3分の1以上が感染した。Riceらは様々なマラリア制御策をモデル化することにより、予防効果が最大10ヵ月間持続する最近導入されたマラリアワクチンが、症候性感染を大幅に低下させ、また、気候によって介入が中断している期間のマラリア感染制御の維持にも役立つ可能性があることを発見した。ただ、こういった発見にもかかわらずRiceらは、マラリアワクチンだけでは伝播を止めるには不十分だと指摘し、加えて、特にマラリアが根強く残る高伝播地域では、ワクチン、薬剤ベースの予防、蚊帳といった従来の道具を組み合わせた多層対策が不可欠だと述べている。
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