28-Aug-2025
自由に移動するイエローストーンのバイソンは草原の回復力を高める
American Association for the Advancement of Science (AAAS)Peer-Reviewed Publication
新しい研究によると、イエローストーンでのバイソンの群れの移動は、景観規模で、養分循環を促進し、生態系の健全性を高めるという。この発見は、放牧についての従来の知恵に反論するもので、大規模な移動を回復させることで、バイソンの持つ生態学的能力を全て出し切れることを示唆している。歴史的に、北米には数千万頭のバイソンが生息し、その季節移動によって北米大陸の広大な草原の生態系が変化していた。今はもう、自由に移動していたかつての野生バイソンの大群はいない。残っているのはわずか約400,000頭で、そのほとんど全てが私有地や公園及び保護区で管理された小さな群れで生きている。バイソンが、生息地を多様化したり、植物群落に影響を及ぼしたり、養分循環や生産性のようなプロセスを推進したりすることで生態系形成において強力な役割を果たしていることは研究で示されているが、移動する大規模な群れの広範な生態学的影響は、現代のバイソンが限られた地域内にほぼとどめられているため、不明点が多い。しかし、イエローストーン北部の生態系におけるバイソンの移動の回復は、大型草食動物が景観規模で生態系をどのように形成するのかを解明するための希少な自然実験の機会である。
Chris Geremiaらは2015年から2022年の間、バイソンの3つの主要生息地の16ヵ所でその放牧動態を追跡し、放牧が炭素及び窒素動態、植物群落、土壌微生物に与える影響を測定した。彼らは、バイソンは植物生産を安定させ、同時に養分循環を加速させ、地上の窒素を増やし、景観の栄養価を向上させることを発見した。特にそれは、一般的に推奨されているより高レベルでバイソンの密度と放牧を支えている栄養豊富な湿った地域で顕著であった。放牧地では土壌や植物の中の土壌微生物密度と窒素含有量も増加していた。Geremiaらによると、今回の研究結果は、大型移動草食動物の生態学的能力は、その体のサイズのみならず、頭数、密度、自由な移動にも備わっていることを示しているという。「移動草食動物と草原生態系の保全を進めるには、景観規模の、それも個々の牧場や牧草地といった規模ではなく、数千頭の大型移動草食動物が自由に景観内を動き回れるような規模の異質性を受け入れなければならない」とGeremiaらは書いている。「私たちの研究結果は、バイソンのような大型の固有草食動物が生息する生態系が今日の世界で上手く機能しうることを強調している。」
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