MRI(磁気共鳴画像法)は、生きているヒトの脳を安全に計測することができる方法であり、ヒトの脳機能や疾患の研究に広く用いられています。MRIの撮像法の中でも、拡散強調MRI(dMRI)は特に水分子の動きを計測する方法で、ヒトの線維束(脳の離れた場所どうしを連絡する神経線維の束)の構造を調べることができるため、疾患による線維束の構造変化を調べる際にも用いられます。
しかしdMRIデータにはノイズが含まれていることから、dMRIデータから事後的にノイズを取り除くことを目的とした解析手法がいくつか提案されてきました。そこで今回、生理学研究所・総合研究大学院大学の田熊大輝大学院生、竹村浩昌教授、東京慈恵医科大学の小川俊平講師は、緑内障患者のdMRIデータにおいて、ノイズ除去の効果を検証しました。その結果、現在提案されている2種の解析方法でのノイズ除去は、画像がより鮮明になるものの、線維束における組織異常の特定には、ほとんど影響を与えないことを明らかにしました。本研究結果は「Scientific Reports」に掲載されました。