Factor Xa阻害薬リバーロキサバンに抗動脈硬化作用があることとその分子機序を解明 − 動脈硬化治療薬としての応用に期待 −
Peer-Reviewed Publication
・活性型凝固第X因子(FXa)は血液凝固因子のひとつですが、近年の研究によりFXaには動脈硬化を促進する作用があることや、心房細動における塞栓症の予防や静脈血栓塞栓症の治療薬として広く用いられている直接型FXa阻害薬リバーロキサバンには冠動脈疾患の既往を有する患者さんの心血管イベントを減少させる効果もあることが示されていますが、そのメカニズムは明らかではありませんでした。 ・今回、私たちの研究グループは、FXaにはマクロファージにおけるオートファジー活性を抑制することでインフラマソームの形成を増強させてアテローム性プラークの進展を促進させる作用があることを見出すとともに、リバーロキサバンはこの経路を阻害することで動脈硬化の進展を抑制している可能性があることを発見いたしました。 ・本研究成果は、今後FXaを標的とした動脈硬化治療薬を開発することに寄与することが期待されます。
OISTの研究チームは、化石種を含む1500種以上のシロアリを対象に頭幅の総合解析を行い、シロアリが進化の過程で徐々に小型化したとする有力説を覆しました。
新しい研究によると、種子を散布する動物種 ―― 全植物種の半数がこれらに依存している ―― の減少によって新たな地域へと移動する植物の能力が制限されることで、植物の気候変動への適応力が著しく低下しているという。この結果は、生態系機能を支える植物と動物の動的な共生を浮き彫りにするとともに、生物多様性の喪失と進行する気候危機の間の憂慮すべきフィードバックを例証している。種子散布は脊椎動物が提供する最も普及した相利共生作用の1つである。気候が変動する中では、多くの植物群は変わっていく自分たちに適した気候ニッチを追いかけるために速やかに移動しなければならない。ゆえに、現在の植物・動物間の共生相互作用は特定の植物種が生き残って繁栄するかどうかに影響すると考えられる。しかし、動物群の減少が進んでいることで、これらの作用は脅かされている。地域規模での植物のレジリエンスに対する植物種の絶滅または減少(デファウネーション)の影響は評価されているものの、地球規模の潜在的影響は依然として分かっていない。Evan Frickeらはこの重大な知識格差に対処すべく、世界の400を超える種子散布ネットワークからデータを収集して、形質に基づいたモデルを開発し、種子散布動物種の減少に起因する種子散布の変化を予測した。その結果、現在の種子散布機能はその自然な水準から劇的に低下しており、熱帯地方以外で低下が特に広がっていることを発見した。Frickeらは、哺乳類と鳥類のこれまでの減少で気候変動を追いかける植物の能力は世界的にすでに60%低下してしまっていると推測している。この結果は、生息地の連続性を高めて現在の種子散布者の潜在能力を最大にする必要性のみならず、大型動物の回復を助けて気候変動下における植物群のレジリエンスを向上させる必要性も明確に示しているとFrickeらは述べている。
沖縄科学技術大学院大学(OIST)とウェスタン・フィリピン大学(WPU)などの研究者チームが、フィリピンのパラワン島の川から2つの魚の新種を発見しました。2新種はヨシノボリ属(Rhinogobius)のハゼ類で、学術誌Zootaxaに先日掲載された論文の中で記載されました。
・投与した体内局所でタンパク質を効果的に徐放するジグソー型ペプチド「JigSAP」(※1) 超分子ゲル(※2)の開発に成功しました。 ・血管再生を促進するVEGFタンパク質(※3)を徐放する「JigSAP」を、脳梗塞発症1週間後のマウス脳内に投与すると歩行機能が改善されました。 ・亜急性期脳梗塞(※4)に対する革新的な細胞フリー再生治療(※5)への展開が期待されます。
電流を制御するのと同じように、熱輸送を精密に制御することは、人類が切望する技術目標の一つです。しかし、高性能な熱整流素子(熱ダイオード)は未だ実現されていません。このたび北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)の研究チームは、宙吊りにした非対称グラフェンナノメッシュ構造が、低温で顕著な熱整流作用を示すことを見出しました。この原理実験は、高効率熱整流素子の実現に向けて具体的な指針を与える成果であり、IOP Nano Futures誌に掲載されました。
本研究は、「アルツハイマー病(以下:AD)」患者のうち、生まれつき遺伝子に変異を持つ患者の脳内に多く蓄積する「アミロイドβタンパク質(以下:Aβ)」の産生のしくみに着目したものです。 同志社大学生命医科学部の角田伸人助教らの研究グループは、大阪大学医学部精神医学教室の大河内正康講師、新潟大学脳研究所遺伝子機能解析学分野の春日健作助教、池内健教授との共同研究で、家族性AD患者では、遺伝子変異を原因とした特殊なAβ43産生経路が増加することをつきとめました。さらに、一般的なAD患者のAβ43産生経路との差異は、発症年齢が早いほど大きくなることも発見しました。
新たな研究によると、ハワイ、アイスランド又はガラパゴスのもののような火山島を生み出すホットスポットは驚くほど冷たく、地球深部のマントル中の活発な溶岩プルームに起因していない可能性がある。今回の発見によってホットスポット起源に関するプルーム古典理論に疑問が投げかけられている。地球表面では2種類の火山活動が観測されている。構造プレートが出合い、地球マントルの大規模循環によって駆動される場合に主要な種類が発生する。他の種類は孤立したプレート内「ホットスポット」火山として発生し、深部マントルから上昇する熱くて、活発な湧昇プルームによってエネルギーが供給されると考えられており、その過剰温度(Tex)は中央海嶺沿いに位置するものより約100~300℃高い。しかしながら、火山ホットスポットに関するTex推定値は地理的対象範囲が限定されており、個々のホットスポットについて整合しないことがしばしばある。海洋ホットスポットが実際に海嶺より熱いのか決定するために、Xiyuan Baoらは海洋海嶺及びホットスポットからの地震波速度測定値を温度に変換した。従前の仮定に反して、Baoらはホットスポットの中には驚くほど冷たいものがあることを発見した。今回の著者たちによると、プルームによってエネルギーが供給されるホットスポットの内の約45%が熱い(Texが155°以上である)一方、約40%は十分熱くなく深部マントルから活発に噴出しない。さらに、15%は冷たい(Texが36℃以下である)。Baoらは、代わりに、より冷たいホットスポットが上部マントルの深さにおいて発生するか、又は小規模対流運動状態が同伴し、これによって冷却された深部プルームによってエネルギーが供給されている可能性があると示唆している。
◆1個の水分子を包み込んだカゴ状のフラーレン分子(H2O@C60)に電極を形成して、分子を流れる電流を測定したところ、水分子の量子力学的な回転運動の検出に成功した。 ◆電流を運ぶ電子と水分子が相互作用すると、水分子が2つの核スピン異性体(水素原子の各スピンの向きが異なる)間で揺らぐことを見出した。 ◆単一の分子や原子の量子状態を制御し、また読み出すことができれば、それらに量子情報を担わせることができる。今回の成果は、分子の回転運動や原子の持つ核スピンの情報を電流で読み出すことに成功したものであり、将来的には1個の原子が持つ量子状態を情報の媒体とする量子情報処理の基盤技術につながると期待される。
国立大学法人東京農工大学農学部附属感染症未来疫学研究センターの大松勉准教授、同大学院農学研究院の臼井達哉特任講師らのグループは、エボラウイルスなどの高病原性ウイルスの自然宿主とされているルーセットオオコウモリ(コウモリ(注1)の仲間のオオコウモリの1種)の腸を再現したミニ臓器(以下「ミニ腸」)の作製に成功しました。これは、三次元培養組織法の1つであるオルガノイド培養組織法を用いました(注2)。実験室にて作製したミニ腸は形態学的・組織学的に生体の腸を再現しており、オオコウモリから分離されたコウモリオルソレオウイルス(ヒトの呼吸器疾患の原因)は予想どおりミニ腸に感染し増殖しました。一方、COVID-19の原因であるSARS-CoV-2は、ミニ腸では増殖しなかったという実験結果を得ました。この結果は、世界的な論争になっているSARS-CoV-2の宿主や人への感染ルートに関する科学的な裏付けになります。 本研究の成果により様々なコウモリの各種臓器についてミニ臓器の作製を加速できるので、感染症研究の新たな糸口を提供すると考えられます。また、自然宿主特有の病原体制御メカニズムの解明につながるとともに、将来の感染症治療薬やワクチンの開発につながることが期待されます。