ドイツの埋葬地についてのゲノム研究によると、考古学的に明確な違いがあるにもかかわらず、漏斗状ビーカー文化西部群の人々は隣接するヴァルトベルク地域とこれまで認識されていた以上の密接な関連があったという。この発見により、驚くほど距離の離れた血縁関係 - 200キロ以上離れた場所に埋葬されていた父親とその息子など - が明らかになり、巨石文化に属する人々が親族関係、移動性、社会的交流によって途方もない距離を超えて結び付いていたことが示された。新石器時代後期(紀元前4,500年から2,800年)、巨石モニュメント - 大きな石を用いた建造物 - がヨーロッパ各地に出現した。これらの建築作品は地域の伝統を反映し、同時に、遠く離れた集団間に広範囲に及ぶ社会的、文化的、祖先的なつながりがあったことも示唆している。巨石社会の1つである北中部ヨーロッパの漏斗状ビーカー文化西部群(TRB-west)は、石を用いた精巧な埋葬室やその他の独自の伝統で知られている。しかし、TRB-Westの人々と隣接する巨石文化地域の関連を解明する手掛かりとして使える遺伝学的エビデンスはほぼない。これまでに保存状態の良いヒトの遺骨が回収された唯一のTRB-West遺跡が現在のドイツに位置するSorsumである。この遺跡には近くのヴァルトベルク文化(WBC)に似た巨石文化の特徴がある。
考古学的な類似点がこれらの集団間の親族関係も反映しているかどうかを調査するために、Nicolas Antonio da SilvaらはSorsumの遺跡とWBCの5ヵ所の遺跡から203人のゲノム(新たに生成された129のゲノムを含む)を解析した。その結果、Sorsumに埋葬された人々は、他のTRB-westの人々とよりWBCの人々との方が、考古学的分類は異なるにもかかわらず、はるかに密接な遺伝的関連があったことが判明した。Sorsumの人々もWBCの人々も、特に男性系統を通じて、非常に高レベルで西洋の狩猟採集民の祖先を共通して持っており、このことは深く持続的な生物学的つながりがあったことを示唆している。注目すべきは、225キロ離れた2ヵ所の遺跡(NiedertiefenbachのWBC遺跡とSorsum)にそれぞれ埋葬された生物学的な父親と息子などの遠く離れた親族ネットワークがあったことを示す驚くべきエビデンスの発見である。他にも生物学的に2親等の関係がSorsumと遠く離れたWBC遺跡の間に確認され、その当時、広い地理的地域にわたって移動、結婚、社会的及び文化的交流が時折あったことが示唆された。しかし、どちらの地域とも、北に位置する更に遠く離れたブリテン諸島やスカンジナビアの巨石文化の人々との間に密接な遺伝的つながりはない。このことは、巨石という伝統が生物学的ネットワークを介してではなく、文化的に広がったと考えられることを示している。de Silvaらは、SorsumとWBC地域は、物質文化では顕著な違いがあるにもかかわらず、遺伝的にはつながった集団であったと主張している。Sorsumは北の方に位置するWBC域の分かれで、隣接するWBCの人々との生物学的及び社会的つながりを維持しつつ、特定のTRB-westの伝統も取り入れたと考えられる。
研究インテグリティの問題にご興味のある記者の方へ:共著者であるBen Krause-Kyoraは次のように述べています。「古代DNA研究では認証基準、再現性、オープンデータ共有、汚染管理が一層重要視されるようになってきています。透明なバイオインフォマティクスパイプラインと第三者による独立した再現を学界全体で採用することで、結果に対する信頼性は大幅に強化されました。今後、長期のデータアクセシビリティ、メタデータ報告の標準化、及び学際的な検証方法への支援の強化により、この分野全体の研究インテグリティはさらに向上すると思われます。」