新しい研究で、他のどの哺乳類より高所で生きるネズミは、海抜ゼロメートルからアンデス山脈頂上まででの繁栄を可能にする予想外の適応を進化させたことが報告された。この発見によると、アンデスに生息する葉耳ネズミは、有毒植物を解毒するという思いも寄らない能力など、代謝適応と遺伝適応の独特な組み合わせを使って、極端な環境を生き延びているという。アンデスに生息する葉耳ネズミ(Phyllotis vaccarum)は世界で最も標高の高い場所に生息する哺乳類で、海抜6,700メートルを超える高地に生息しているのが見られる。これらの最高所では気温はほぼ一定して氷点下、酸素レベルは海抜ゼロメートル地点のわずか約44%と、哺乳類が生き延びるには極めて厳しい生理学的環境となっている。しかし、このような状況にもかかわらず、葉耳ネズミは繁栄し、その生息地は海抜ゼロメートルから標高の高い山頂にまで広がっている。アンデスの凍える薄い空気など、様々な信じ難い環境下でのこの種の特異的な生存を可能にした適応については、十分には解明されていない。Schuyler Liphardtらは今回、その幅広い標高範囲の生息地から採取した167匹の葉耳ネズミの全ゲノム配列データを解析した。標本の収集は、中央アンデスでの5回にわたる極端な高標高域での調査と低~中標高域での追加調査で行った。Liphardtらは、高標高域に生息するネズミと低標高域に生息するネズミ及びその近縁の低地性種を比較し、加えて、低温低酸素条件を再現した実験室実験を実施することにより、高地性のネズミは体熱の産生量がかなり多く、筋肉と熱産生褐色細胞の活性もより高いことを発見した。このことは、酸素が足りなくても体を温かく保つ能力が高いことを示している。驚くことに、これらのネズミは、ヘモグロビンの変化といった高地に生息する他の哺乳類に見られる多数の酸素運搬適応に頼っているのではなかった。むしろ、慢性的な酸欠状況でもエネルギー生産を上げ、血管を調整し、身体機能を助ける様々な生理学適応と遺伝適応を頼りにしていると考えられる。集団ゲノム解析により、高地に生息するネズミのこれらの適応は、高地集団と低地集団の間で遺伝子流動がかなりあるにもかかわらず、維持されていることも明らかになった。Liphardtらはまた、ゲノム構造変異が適応を促しているようではないことも発見した。意外にも、ゲノムに基づいたエビデンスにより、植物由来の化合物の解毒に関与する経路が幅広く選択されたことが判明し、この種が有毒植物の代謝能力も進化させたことが示唆された。このことは、標高に関連した適応において、摂餌生態がこれまで認識されていたよりはるかに大きな役割を果たす可能性があることを示している。